ナイル殺人事件

タワーリング・インフェルノやキングコングで巨大な作り物を駆使したギラーミン監督ですが、

本作ではその圧倒的な統率力を「本物のスケール」をカメラに収めるための大規模な現地撮影へと注ぎ込みました。

自己主張の強い大物たちを灼熱のエジプトへ連れ出し、

トラブルなくスケジュール通りに撮影を進めるには、巨大セットを仕切るのとはまた違った、

ギラーミン監督の「妥協を許さない強烈なリーダーシップ」が不可欠でした。

このように、ナイル殺人事件では「セット作り」ではなく、

「歴史的建造物という究極の舞台装置」と「大スターたち」を過酷な環境下でまとめ上げるという形で、

ギラーミン監督の職人としての腕が遺憾なく発揮されています。

 

しかし、ジョン・ギラーミン監督は、この作品以降は急速に輝きを失います。

そして、キングコング2(1986年)という過去の栄光の残骸にしがみつくような作品で、

そのまま表舞台からフェードアウトせざるを得なくなりました。

 

ジョン・ギラーミンは、1970年代のハリウッドという巨大なシステムの中心に立ち、

そのシステムが要求する「時代の最大のスペクタクル」を誠実に作り上げた結果、

システムの変化とともに役割を終えました。