昔、貧しい青年の絵描きが、空腹でさまよう少年を助けました。
その少年は、実は天使だったのです。
青年は、具の少ないスープとパンで天使をもてなし、心を込めて世話をしました。
やがて天使は天に帰り、感謝のしるしとして「天使の筆」を青年に贈ります。
しかし、青年は、その存在に気づかないまま、日々を過ごしていきます。
時は流れ、青年は結婚し、子どもが生まれ、家族とともに歳月を重ねていきます。
貧しいながらも、絵を描き続け、静かで誠実な人生を歩みました。
やがて年老いた青年が天に召される日、天使と再び出会います。
天使は言いました。
「君に贈った筆、 あれで豊かになると思っていたのですが…」
青年は笑って答えます。
「そんな筆は、もらっていないよ。ずっと貧乏暮らしだったさ。」
そのとき、天使は気づきます。
魔法の筆は、青年のズボンのすそについていました。
青年が天国にあがる空に、その筆によって描かれた「人生のタペストリー」が広がっていました。
そこには、家族との日々、喜びや悲しみ、成長と老いが、優しく美しく描かれていたのです。
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