山月記

中島敦の簡潔で隙のない知らない語彙ばかりの文章は、受験を意識し始めた高校生の私は恐怖すら覚えました。虎になった人の話、「タイガーマスクかよ、伊達直人かよ」とテレビや漫画ばかり見ていた私の感想は情けないものでした。今、読み返してみると現代文の最高峰であると感嘆します。冒頭の数行で李徴の転落人生が語られます。虎になった李徴には元の人格はありません。虎の容姿になる話は、SF小説のようですが、私たちの暮らのしの中でも人は虎になります。人が虎になるのには特別な理由はありません。私たちの中に虎がいるのですから。人が虎になるのを抑制するのが、人の世なのでしょう。